「清水寺の寺宝」 Treasures of Kiyomizu

清水寺の寺宝 2 秘仏 十一面千手観音立像<後編>

※1 観音経
正式には「妙法蓮華経普門品第二十五」
※2 懸仏
銅板などに仏像を線刻などであらわし、内陣にかけて拝んだもの。

33年という周期に込められた意味。それは、観音経(※1)に記されている観音菩薩の功徳に由来する。「観音さまはその姿を自在に変化させることで一切衆生を災厄から救うとされ、その数が三十三身なのです。清水寺の秘仏である御本尊を33年に一度のご開帳としているのはこのことにちなんでいるのです」

 生きとし生けるものすべてを救うため、ときには人間や龍などにも変化するという観音菩薩。慈悲の象徴としてあらゆる災厄に応じるために臨機応変に姿を変えるのだ。

 「清水寺以外にも本尊のご開帳を33年ごとに定めている寺院は多くあります。また『西国三十三所霊場』などの名称にもあらわれているように、観音信仰にとって33という数字は特別なものなのです」清水寺では幾度もの災火で創建以来の資料の多くが焼失しているため、33年に一度のご開帳がいつから始まったかは定かではない。しかし、1773年(安永2年)に30数年ぶりのご開帳がおこなわれたことが記録に残っており、以降は33年ごとのご開帳が繰り返し続けられてきたことがわかっている。

 「ご開帳について書かれた古い資料には、ご本尊をひと目見ようと全国から多くの参詣者が清水寺につめかけていた様子が記されています。今と変わらず皆が待ち望んでいた一大行事だったんですね」

本尊は御正体でいつでも拝める

秘仏である本尊を普段目にすることはできないが、その代わりとなるのが外陣正面の欄間に掲げられている懸仏(※2)だ。

「この懸仏は『御正体』ともいい、円形の銅板に本尊がレリーフで施されているものです。直径2メートルと大きく、清水型十一面千手観音の特徴がわかりやすく表現されているため、本尊のお姿をよく知るには最適です。また、中央の本尊とともに、左右には脇侍の勝軍地蔵と勝敵毘沙門天の御正体が並んでいますので、秘仏である三尊像のお姿はすべてこちらで拝することができます」

この御正体は、多くの信仰を集める「清水寺の観音さま」をより身近に、いつでも拝むことができるようにとつくられたものだろう。本尊が祀られた厨子前に安置されている御前立仏とともに、ご開帳時以外の日常では、本尊に代わって多くの参詣者が手を合わせている。

荘厳仏具で彩られた内陣。やわらかな空気感が人々を包み込む。

秘仏 十一面千手観音立像(後編)

清水寺学芸員 坂井 輝久

1948年、福井市生まれ。
京都新聞社勤務を経て2012年より現職。